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2024.11.01
【速報】すしざんまい逆転敗訴!Sushi Zanmai勝訴判決の解説
Sushi Zanmai事件の知財高裁(控訴審)判決を解説します。判決日翌々日解説です!東京地裁の判決が覆り、すしざんまいで有名な喜代村にとっては逆転敗訴となる判決になりました。東京地裁では、マレーシアのすし店「Sushi Zanmai」を日本語のHPに掲載する行為が商標権侵害と判断されていました(解説1、解説2)。弁理士オカムラが裁判所HPに判決文が掲載される前に知財高裁の判決文の記録を閲覧したため、おそらく世界最速の具体的な解説です。ポイントは、ネーミングの類似性ではなく、商標法上特に専門的な「役務の広告」と「属地主義」にあります。
1.番組概要
「ゆるカワ♡商標ラジオ勉強会」複雑に入り組んだ商標業界に緩やかなメスを入れ、様々な謎や疑問を優しく究明する「ゆるカワ♡商標ラジオ」毎週木曜日22時〜配信📢
2024年11月1日
2.何の役務の広告か
知財高裁は、外国飲食店云々の前にそもそも、今回の被告(ダイショージャパン)のウェブサイトが何の広告かについて判断を示しました。同サイトは被告の事業である食材の輸出という役務(海外輸出を検討する国内事業向けの役務)の広告に該当すると判断しました。つまり、飲食物の提供に関する広告に該当しないという判断です。したがって、被告の行為は商標法2条3項8号に該当しないため商標権侵害にならないという結論です。
マレーシア「Sushi Zanmai」の情報量(メニュー、価格、店の場所がないこと)や全体に占める割合などから食材の輸出に関する広告であって飲食物の提供に関する広告でないという評価がなされました。この評価手法は今後の商標実務で重要なものと考えられます。
3.日本の出所表示機能を害するか
被告のサイトへの掲載が仮に「広告」に該当し商標的使用に該当するとしても、実質的違法性がないとの判断も示されました。属地主義に基づき、外国の飲食店の日本向けの広告は日本の出所表示機能を害さないという理由です。具体的には、日本向けの広告を見た日本の消費者が出所を誤認(混同)したとしても、誤認の結果は商標権の効力の及ばない国外で発生していると評価し、日本での出所表示機能が害されないとの判断です。
4.共同勧告の参照
裁判所はWIPOの共同勧告(インターネット上の各国商標権の抵触問題を解決するための国際的ガイドライン)を参照しました。各要素を総合的に判断し「商業的効果を有しない(=日本での商標の使用でない)」との判断を示しています。2.だけでも結論を出せたのに3.まで判断を示し、さらに共同勧告にまで踏み込んでいただき、実務家として裁判官には感謝しかありません。田村善之先生によると、共同勧告が商標権侵害訴訟で引用されたケースはないようであるとのことですので、画期的な事例であるといえます。今後の実務に影響がある判決でしょう。
5.さいごに
当初筆者は、2.よりも役務の類否で整理する方が理解しやすい感じがしました。一方、Sushi Zanmaiの飲食店は被告のグループ会社の行為のため、「飲食物の提供」を被告自身の役務と評価する余地もあるのでしょう。それを踏まえると、”飲食物の提供の広告でない”の方が説明しやすいのだと思います。余談ですが、被告が提供する食材の輸出という役務とは審査基準に沿うと「飲食料品の卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(第35類)」や「輸出に関する事務の代理又は代行(第35類)」あたりだと思いますが、その粒度では示されていません。
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