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2020.03.01
Vol.25 (SIX PAD)
平成29年(ワ)第5108号意匠権侵害差止等請求事件 大阪地裁
物品「トレーニング機器」
1.結論
被告商品が原告(MTG)の登録意匠と非類似であるとして、原告の主張は棄却された。
2.概要
意匠法と不正競争防止法とで、「類似」について異なる判断がなされた。意匠権侵害の判断において、広義の誤認混同のおそれは意匠法が規律するところではない旨が示された。つまり、原則どおり、「美感が異なるか否か」という基準に基づいて意匠の類否が判断された。意匠の類否判断の詳細な説明は割愛する。
3.コメント
被告商品の実施は、登録意匠の実施と認められた。この点では、被告が意匠登録したメリットがあったといえる。
一方、別事件では、不正競争防止法2条1項1号に基づいて、被告MTGは被告商品の差し止めが認められた。具体的にいうと、MTGによる同号に基づく仮処分命令の申立に対して、東京地裁及び知財高裁は、MTG商品の形態の周知性、被告商品の形態との類似性、両製品の混同のおそれを全て認めた(平成30年(ラ)10008号保全抗告申立事件:知財高裁)。
意匠法と不正競争防止法とで、「類似」の考え方が違うのは当然だが、その確認ができた点で本判決は意義がある。MTGは本事件の訴えの提起と上記不正競争防止法に基づく事件の申立を同時期に行っているように伺える。両方提起することのメリットを以下に示す。
(a)差止の可能性が増える
2つの法律では要件が異なるため、どちらかで侵害でなくともどちらかで侵害となり得る。本件及び別事件の判断のとおり、美感が共通しなくても、不正競争防止法上は侵害となり得る。「類似」の考え方が異なるためである。とはいえ、不正競争防止法には「周知性」及び「混同のおそれ」の要件もある。類似性が認められたとしても、仮に、地域(商圏)の違いや混同の打ち消しの表示等により、混同のおそれが無いと判断されれば不正競争防止法上侵害ではなくなる。逆に、意匠法では混同のおそれの要件がない分、類似性が認められれば侵害となる。
どちらの方が差止しやすいとは一概にいえず、状況による。武器は多いに越したことはないので、両法に基づくMTGの差止請求は効果的な対応であるといえる。
(b)損害額が増える
基本的には(a)のとおりであるが、異なる点として、両方で侵害が認められれば、侵害の根拠が異なるため、より多くの損害賠償を獲得できる。
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