Vol. 33 (Re就活 vs リシュ活) | 事例研究 | brandesign-ブランデザイン-|商標と意匠専門の弁理士事務所

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2021.01.18

Vol. 33 (Re就活 vs リシュ活)

平成30年(ワ)第11672号(大阪地方裁判所判決)

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指定役務「広告,職業のあっせん,求人情報の提供」他

 

1.結論

「リシュ活」等が「Re就活」と類似し、原告の商標権侵害にあたる(差止請求認容・損害賠償約44万円認容)。

 

 

2.理由

以下の表のとおり、外観(見た目)及び観念(意味)は非類似であるが、称呼(読み)が類似であると裁判所は判断した。

以下、筆者が重要と思う裁判所の認定及び判断を抜粋する。

 

(a)観念の認定

上記の類否の前提として裁判所は観念について次のように認定した。原告商標からは「再び行う就職活動」の観念が生じる一方で、被告商標からは特定の観念生じない。「履修履歴活用面接」を「リシュ面」と呼ぶものの、「リシュ」単体が「履修履歴」の略称として一般的に使用されている事実がないためである。

 

(b)称呼の類否判断

称呼について被告はアクセントの相違について主張した。これに対して、「Re就活」も「リシュ活」も造語なので固定したアクセントがないとして裁判所はこの主張を退けた。

 

(c)混同のおそれ

取引の実情を考慮して、需要者(求人企業か求職者か)によって「混同のおそれ」の判断が変わった。詳細は以下のとおり。

 

i.求人企業

求人企業は混同するおそれがない。文書で申し込み、有料、重要な活動の一環であること等から慎重に検討するため、外観・観念が類似しない以上、称呼の類似性のみをもって混同しない。

 

ii.求職者

求職者は混同するおそれがある。以下の理由で求職者は外観よりも称呼を強く記憶し、称呼によってサービスの利用に至るためである。

(1)無料で簡易に被告サービスの会員登録が可能であって、求職者は必ずしもサービス内容を精査しない

(2)称呼に基づくカタカナ等での検索が一般に行われている

(3)検索エンジンがあいまいな表記検索にも対応していることが広く知られている

 

 

3.コメント

(a)この裁判に注目する理由

本件のような商標(長音の有無のみ相違・音数少ない・外観非類似)は特許庁で非類似となる傾向がある。実際、「リシュ活」は登録になり異議申立でも非類似の判断がなされた(異議2019-900352)。

 

筆者は商標調査において、日常的に本件のようなケースの類否判断をしてきた。特許庁と裁判所とでは判断基準が異なるところ、最近の裁判例で本件と同様のケースは無い(筆者の知る限り)。

 

(b)実務上の指針

本件によって、実務上の指針として以下が導き出せる。

 

i.長音(ー)の有無のみが相違する先願商標が存在する場合、後願商標の使用は(音数が少なくても)安全でない

ii.需要者注意力高い商品・役務の場合、外観・観念も非類似であれば上記i.は当てはまらない

 

(c)控訴審でどうなるか

本件は控訴された。「高裁の方が地裁よりも取引の実情を具体的に考慮する傾向がある」と筆者は捉えている。もっと具体的に考慮すれば、以下のように結論が変わるだろう。

 

被告のサービスは履修履歴を活用する点に特徴がある。そうすると、このサービス利用者は少なくとも「リシュ活」の「リシュ」は「履修」の「リシュ」であると理解するであろう。このため、「再び行う就職活動」の「Re就」とは全く異なる意味として理解し、この観念の相違により混同可能性が減る。また、観念の相違は称呼の印象・記憶へも影響を与えるから、「長音の相違が称呼全体の類否に与える影響は大きい」という判断になりそうである。

 

なお、需要者層の違い(学生か第二新卒か)が混同の判断に影響するか否かも気になるところである。第二新卒向けの「Re就活」のサービス利用者が、後にカタカナで「リシューカツ」と検索し学生向けの「リシュ活」を利用するという場面は少なそうだ。

 

(d)その他

被告が使用する「risyu-katsu.jp」と原告商標との類否も判断された。裁判所は「risyu-katsu.jp」の称呼を「リシューカツ」と認定した。これは「risyu」と「katsu」の間の「」が長音と捉えている。しかし、アルファベットの並び中のハイフンを長音と捉えるのは一般的でないと思う。また、ドメイン名が商標的使用といえるのは、関連するウェブサイトでドメイン名と類似の商標の使用が前提にあるはずなので、「リシュ活」を無視できない。そうすると、「リシュカツ」と称呼されるといえる。

 

本件は、役務の類否についても、実務上参考になる。プラットフォームやアプリ等ソフトウェアを提供しているだけという被告の主張に対して、求人企業から見れば「広告」、求職者から見れば「職業のあっせん,求人情報の提供」と理解されると判断された。

 

他にも色々気になる点がある事件であり、控訴審が気になって仕方がない。

 

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