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2024.11.20
続・MARCY’S異議申立て事件~イラストが芸能人の肖像に該当するか~
イラストが田代まさしの肖像に該当するか否かについて判断された事例です。以前異議申立の直後に書いた記事の続きで、今回、特許庁審判官の判断が下されました。また、MARCY’S(マーシーズ)が田代まさしの略称(芸名)として著名か否かや承諾書が偽造か否かといった気になる論点についても解説します。芸能人のイラストや芸名などの商標登録について考えさせられる事例です。
1.番組概要
複雑に入り組んだ商標業界に緩やかなメスを入れ、様々な謎や疑問を優しく究明する「ゆるカワ♡商標ラジオ」”ほぼ”毎週木曜日22時〜YouTube配信📢
2024年11月14日配信
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2.商標解説
23:43 OMECO社長、逆転まんぐり勝利!続・MARCY’S異議申立て事件
特許庁は田代まさしの主張を退け、OMECO社の商標登録を維持する判断を下しました。審査段階で特許庁はイラスト部分を田代まさし氏の肖像だと判断した上で拒絶理由を通知しました。しかし、今回の異議申立ての決定では、そもそも田代まさし氏の肖像に該当しない旨の判断をしました。具体的には、以下のように述べられました。
「当該図形部分は黒いサングラス、髭、蝶ネクタイ等を特徴とするイラストにすぎず、特定の人物の容貌、姿態をうつしとった肖像とまではいい難いものであって、人格的利益として保護すべきといえるほどに特定人の同一性を一般に認識させるものということはできない。」
今後タレント等のデフォルメされたイラストを出願する場合などに、上記の考え方が参考になります。また、「MARCY’S」が田代まさし氏の略称として著名であるとも認められませんでした。売上額や広告宣伝費等を客観的に示す証拠が提出されていないことに加えて、「MARCY’S=田代まさし」として広く認識されていたことを示す使用事実もないことが理由です。
さらに、承諾書が偽造であるという田代氏の主張も以下のとおり認められませんでした。
「仮に本件商標の図形部分が申立人の容貌を表した肖像であったとしても、提出された承諾書が偽造されたものであるとする証拠は申立人による宣言書(甲5)のみであって、本件商標の登録査定時において、承諾書が偽造されたものであったことを認めるに足りる客観的な証拠は見いだせない。」
芸名や肖像を含む商標について、出願人が商標登録を受けることについて承諾書(芸能人等から承諾を受けたことを示す書類)が必要な場合があります。承諾書は一旦作成された後でも査定時(登録してよいかどうかの通知をした時)までに撤回されてしまうと撤回が認められます。その場合、出願人は商標登録できなくなります(LEONARD KAMHOUT事件、最高裁平成15年(行ヒ)第265号)。一方で、査定時を過ぎれば撤回は認められません。異議申立てや無効審判では査定時を基準に判断されるためです。そして、今回の事例では、”承諾していない”という宣誓書のみでは承諾書の有効性は失われないという判断が下されました。これらの事例から、承諾書を作成する段階、手順、方法(撤回に関する条項を契約書に盛り込む等)については慎重に検討し進めるべきだといえます。
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