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2024.06.04

【AFURI事件その後】雨降と類似か?判決を解説

AFURI事件に関する判決が出ました。AFURI株式会社が吉川醸造を相手に商標権侵害訴訟を提訴したことにより、炎上していた事件です。AFURI株式会社(原告)が敗訴しました。とはいっても、「雨降(AFURI)」等の使用の可否(商標権侵害)に関する判決が出たのではありません。AFURIについては裁判や特許庁での審判が多数並行していますが、今回(令和6年5月16日)判決が下されたのは、本件商標「雨降」の商標登録の有効性に関するものです(令和5(行ケ)10122、無効2022-890068号)。そこで、まず今回の判決の解説を行い、その後、今回の判決によってもAFURI事件は未解決であることについて詳しく説明します。

雨降vsAFURI比較図

1.結論

請求棄却(無効審判不成立の審決を取り消す旨の請求を棄却する)

①両商標は類似でないため4条1項11号および10号に該当しない

②ラーメン屋「AFURI」は周知でないため同15号に該当しない

③公序良俗違反や不正の目的の前提を欠くため同7号および19号に該当しない

 

※この記事では①のみを解説します。

 

2.非類似の理由

引用商標「AFURI」と本件商標「雨降」が非類似との理由として、裁判所は外観及び観念が相違することを挙げています。言い換えると、両者は見た目と意味が違うということであり、前提として「雨降」が「雨の降ること」等の意味を有するのに対して「AFURI」は特定の意味を有しないとの認定がなされました。そして、称呼(読み)については、共通する余地があるとしても、外観と観念の相違は称呼の共通性による印象を凌駕する旨の判断が下りました。

 

称呼については「雨降」が「アフリ」と読まれるか否かが重要な争点でしたが、裁判所は明確に「アフリ」と読まれるとは言いませんでした。つまり、「雨降」から「アメフリ」又は「ウコー」の称呼が生じると認定をした上で、「雨降山(アフリヤマ)」の使用例等を踏まえ、「雨降」から「アフリ」の称呼が生じないとはいえず、両商標の称呼が同じとみる余地もあると認定しました。

 

また、原告(AFURI株式会社)は、自社のラーメンや被告(吉川醸造)の商品が「阿夫利山(雨降山)」に由来する等として観念が共通すると主張したり、被告商品が「アフリ」と称呼され取引されている取引の実情を考慮し「雨降」から「アフリ」の称呼が生じると主張しましたが、いずれも認められませんでした。根拠として最高裁判例(最高昭和47年(行ツ)第33号同49年4月25日第一小法廷判決参照)が述べる「商標の類否判断に当たり考慮すべき取引の実情は、その指定商品全般についての一般的、恒常的なそれを指すもの…」を挙げ、原告が主張する実情は「一般的、恒常的」でない旨の判断が下りました。

 

ちなみに、原告(AFURI株式会社)は、商標公報やJ-PlatPatの「称呼(参考情報)」欄に「アフリ」との記載があることも「雨降」から「アフリ」との称呼が生じる根拠として主張しています。この主張にについて裁判所は何も述べていません。

 

確認すると確かに「アメフリ,ウコー,アフリ」とあります。

称呼(参考情報)の説明図

しかし、誤解されがちなのですが、これは検索のための参考情報でしかありません(以下J-PlatPatのヘルプの解説参照)。つまり、ここに記載の称呼が生じるとは限りません。J-PlatPatヘルプ

 

3.AFURI事件は未解決

今回の判決は商標登録の有効性が争われた行政訴訟であり、これによってAFURI事件が解決したわけではありません。つまり、商標「雨降(AFURI)」等の使用の可否については民事訴訟(商標権侵害訴訟)で決着が着きますが、現在この民事訴訟が終了した情報は見つかりません。AFURI株式会社HPによると、吉川醸造が現実に使用している表示(一部)は以下の写真の通りであり、これらの使用の可否は今回の判決で判断されていません。また、今回の判決で類似が争われた「雨降」には「AFURI」が添えられていないため、吉川醸造による以下の使用がこの判決によって間接的に正当化されることもないです。

被告使用態様

ちなみに、吉川醸造は英文字を添えた「雨降(AFURI)」を商標登録出願しましたが、特許庁から拒絶理由通知書を受けており未登録です。具体的にいうと、AFURI株式会社の登録商標「AFURI」(6245408)等と類似するとして登録できないと判断されています。

雨降AFURIとAFURIの比較図

この判断は暫定判断であり反論次第で覆る可能性があります。吉川醸造は意見書で反論をしていますが、審査官は登録商標「AFURI」に対する審判(無効2023-890066)の結果が出るまで手続を中止する旨の通知書を出しています。個人的には、待たずに審査を進めてして欲しかった気もします。しかし、同時並行で様々な事件が動いている上、炎上リスクもあることから、待たざるを得なかったのでしょう。

 

「AFURI事件はいつ解決するのだろうか」と思いながら、いつも行くスーパーで売られている「阿夫利」という名の豆腐を手に取りつつも何となく買っていないことを思い出し、解決した暁には買おうと心に決めました。

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