INFORMATION情報発信
2018.11.04
Vol.11 (SHI-SA)
先日、沖縄に行ってきた。 沖縄といえばシーサーであるが、それにまつわる商標の事件を思い出さずにはいられなかったので、以下に紹介する。
1.結論
第1、第2事件ともに登録維持(4条1項11号、15号及び19号非該当)
2.概要
第1事件
引用商標に基づき特許庁が下した商標登録取消の決定に対する取消訴訟である。両商標は、称呼、観念及び外観上異なり、本件商標から引用商標を連想するとしても、誤認するおそれはないとして非類似とされた。
第2事件
第1事件の判決の後、差し戻し審にて特許庁が再度下した商標登録取消の決定(第1事件とは別の条文や別の引用商標「シーサー」及び「Schiesser」に基づく決定)に対する取消訴訟である。称呼、観念及び外観における相違点に加え、本件商標権者による販売規模が比較的小規模(主として沖縄県内の店舗及びインターネットの通信販売)である点を考慮し、両商標が付された商品間で出所の混同が生じるおそれはないとされた。また、「パロディ」は商標法上の概念でなく、あくまでも4条1項15号に該当するか否かを判断すべきとされた。
以下の事実等から不正の目的なしと判断された。
・沖縄を象徴するシーサーが沖縄から大きな舞台に跳び出してほしいという商標権者の願いが込められていること
・本件商標を付したTシャツ等の販売ルートが相当限定されている(主として沖縄県内の店舗及びインターネットの通信販売)
3.コメント
著名商標のパロディ的な商標について判断がなされた事案である。差し戻し審では通常、裁判所と同じ結論になることが多いが、本件は、異なる理由や引例で再度裁判所と異なる結論を出した点で、何としても本件商標登録を取消したいという特許庁の執念を感じる。
本件商標をパロディだと感じる時点で、需要者が本件商標の付された商品をPUMAの商品と取り違えることがないというのはそのとおりだと思う。
一方、裁判所は、以下のパロディ的商標については、PUMA商品と取り違える(出所混同の)おそれありとして、登録を認めないと判断している。
「SHI-SA」事件との違いは何であろうか。イラストを一見すると、「KUMA」よりも「SHI-SA」の方が「PUMA」に近い気がするが。。ちなみに、上記商標「KUMA」は北海道の会社の商標であるが、沖縄はよくて北海道はだめなのか??
「KUMA」事件では以下の事実等に基づき、周知著名となっている引用商標(PUMAブランド)を連想,想起して,出所の混同のおそれありと判断された。
(a)文字及び動物のシルエットにおいて、「PUMA」と外観上酷似した印象を与える
(b)衣類等では、商標がワンポイントマークとして小さく表示され、些細な相違点に気付かれない取引の実情がある
確かに、文字部分は「SHI-SA」より共通点が多いが、イラストは全然違うような。。文字の近さの方がイラストの近さよりも重く受け止められるのだろうか。また、「SHI-SA」も同じく衣類に関する登録であるが、このような取引の実情は指摘されていない。
あと考えられるのは、「SHI-SA」事件では販売規模が比較的小規模という点が指摘されていたが、「KUMA」事件では販売規模が特に主張立証されていないため、実はこれが結論に大きく影響したのだろうか。
注目すべきは、「SHI-SA」第1事件でも「KUMA」事件でも、本件商標から引用商標連想されるとしているが、「SHI-SA」第1事件では出所混同のおそれを否定している一方で、「KUMA」事件では出所混同のおそれを肯定している。
判断時期や裁判官が違うとはいえ、なんというか…
まあ、リアルに考えれば、「連想するが混同しない」というのが真実だと思う。結局のところ、どう評価するかという裁判官個人の主観(思想)によるところが大きいであろう。
ちなみに、「KUMA」の商標権者のライセンシーが出願した以下の商標も登録が認められなかったが、その理由は公序良俗を害するおそれがある(4条1項7号)というものであった。
不服2008-10902 不服2008-10900
4.視察
「SHI-SA」事件は筆者が個人的にかなり注目していた事件であり、「SHI-SA」のTシャツの現状を調べるべく、那覇にて視察してきた。お土産物が多数売っている国際通りのある店舗に「ジャンピングシーサー」なる名前の店を発見した。
Tシャツを色違いで買ってみた。黒色のが初期バージョンで本件商標に相当する。白色のはニューバージョンのようであるが、これに相当する商標も登録されている(第5392942号)。訴訟で2度も戦ったところといい、商標権者の権利化の意識の高さが垣間見える。
最後に、こんなものも見つけたが、これは大丈夫なのであろうか。。
何の商品かを皆まで書くのはやめるが、いわゆるポリューション的な問題になりそうだ。また、仮にこの事実が「SHI-SA」事件にて主張されていれば4条1項19号に関して裁判所の判断が変わったかもしれない。
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