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2021.11.16

標準文字か?ロゴか?どちらを商標出願すべきか

標準文字かロゴ、どちらを商標出願すべきか?言い換えると、どちらを商標登録の対象(「登録対象」と呼ぶ)とすべきか?以下に詳しく解説する。ロゴといっても人によって解釈が違うところ、この記事ではイラストや図形でなく文字をデザイン化したものをロゴと呼ぶ。

 

文字を登録対象とする場合、標準文字制度が利用されることが一般的である。標準文字制度は特許庁指定の書体(明朝体の一種。詳しくはコチラを登録対象として出願し商標権を取得する制度である。「brandesign」を例にすると、以下の(1)が標準文字で(2)がロゴである。

 

(1)標準文字

 

(2)ロゴ

 

そもそも何故こんな話が出るかというと、1件の出願でロゴも標準文字も登録対象とすることはできないからだ。以下のように出願書類には、【商標登録を受けようとする商標】の欄に1つの登録対象を記入する必要がある。

2件出願すれば済む話だが、追加費用がかかるため、どちらにすべきか?という議論になる。

 

ロゴにするメリット

そもそも商標権は何のために取得するのか?理由の一つとして、他社の模倣を防ぎ貴社の“信用“を守ることにある(詳しくはコチラ)。模倣の仕方には様々なパターンがあるが、文字列(名称)は変えつつデザインの雰囲気を似せるという手法がある。商標権は同じものだけでなく、類似(似ているもの)にまで効力が及ぶ。類似かどうかの基準は、見た目、読み方(名称)、意味の3つであるが、一般に読み方が同じであれば類似の可能性が高い(例えば、アイホンとiPhoneは類似と判断された)。このため、貴社が標準文字で登録し他社が同じように読めるロゴを使った場合、他社の使用を止めることができそうである。

 

前置きが長くなったが、ロゴを登録対象とするメリットは何なのか?ズバリ、ロゴだと文字列だけでなく、書体のデザインも権利範囲に入ることがメリットだ。例えば以下の事例では、書体がソックリであることを考慮し、特許庁は登録対象と他社ロゴを類似と判断した。仮に登録対象が「SEMIRAMIS」の標準文字の場合、他社ロゴとは非類似となると考えられる。

 

判定2020-600035

 

*特許庁の判定書記載の商標が不鮮明なため、上記他社ロゴはネット上にあったロゴを参考として表示している。

 

ロゴにするデメリット

一方、ロゴにデメリットもある。「読めるかどうか問題」がある。以下の事例では、先に登録されていた登録対象は「OSG」という文字とは認識できず「オーエスジー」とは読めないとされ、後から出願された他社ロゴ「OSG」と非類似とされた。

 

不服2015-19500

このような判断が妥当かどうかは置いておくとして、このような事例を教訓として「読んでもらえない」というリスクを考える必要がある。その上で、登録対象をロゴか標準文字のいずれにするのが良いかをケースバイケースで判断していく必要がある。

 

登録ロゴと新ロゴ不一致によるリスク

もう1つ重要なことがある。出願時にロゴか標準文字のどちらを登録対象とするのかを決めて出願した後に、登録対象を変更することはできない。そして、貴社の使用するロゴが変わった場合、旧ロゴの登録のみでは法的なリスクがある。

 

具体的にいうと、登録したロゴと使用するロゴが一致しない場合、不使用取消審判という制度により商標登録が取消になるリスクがある。取消になると、貴社のロゴと似たロゴも文字も他社により登録できてしまう。一方、標準文字にて登録した場合、取消しになるリスクが低い。この対比は、以下の審判1と審判2の事例の比較から実感していただけるだろう。

ずっと使うロゴか?

上で説明した法的リスクを避けるため、ロゴを登録対象とした場合ロゴが変わる度に商標登録し直す必要がある。例えば、「NTT/DOCOMO」はロゴ変更になった後、登録し直している。

しかし、「使うロゴがどんどん変わるかもしれない…」という場合に、毎回登録し直すのはコストがかかってしまう。そこで、このような場合には、標準文字を登録対象とする方が良いであろう。

 

まとめ

以上を踏まえると、ある程度長期間ロゴを使用し続けるという意向(ある意味“覚悟”)がある場合には、ロゴを登録対象とすることをお勧めする。一方、この“覚悟”がない場合、標準文字にした方が良いだろう。

 

一応の基準を示したが、ロゴが「読んでもらえない」というリスクがあるかどうかは様々な事例の知識が必要であるし、リスクがある場合にどちらにすべきかは「何を守りたいか」によるため、結局ケースバイケースとなる。

 

貴社の信用を万全に守るには、標準文字もロゴも2件商標登録するのがベストである(上記例でNTT DOCOMOはロゴに加え標準文字でも登録している)。しかし、2倍費用がかかるのは負担が大きい上に、弁理士の手間から考えても妥当でない。そこで、brandesignでは2件目は1件目の1/3以下の手数料としている(料金表)。

 

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