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2019.03.26

Vol. 18 (優先権と図面の表現)

不服2018-001387

物品:携帯用ライト                                      物品:灯

 

 

1.結論

本件意匠は優先権主張の基礎出願の意匠と同一であると判断され、優先権が認められた。その結果、基礎意匠は本件意匠の登録の障害にはならなかった(意匠法3条1項3号)。

 

 

2.概要

審査段階では、審査官は、本件意匠は基礎意匠と図面において差異があるため実質的に同一ではないとして優先権を否定した。一方で、本件審判では同一性が認められ、優先権ありとされた。本件意匠の細線は立体表面の形状を表すのに対して、基礎意匠の形状以外を示す線(ワイヤーフレーム)は面の変化の態様を示す。このため、両意匠は表現方法が異なるにすぎず、実質的に同一であると認められた。

 

3.コメント

基礎意匠の図面はいわゆるワイヤーフレームを示すものである。ワイヤーフレームは、CG図面を線図に変換させた際に表れる線であり、本来的な線図には表されることのない線である。ワイヤーフレームの取り扱いについて、意匠法及び審査基準等には定められていない。

 

本件審決に基づくと、図面の表現方法の違いにかかわらず優先権は認められるべきといえる。しかし、優先権の確実性及び不要な拒絶理由を避けるために、出願意匠の図面は基礎意匠の図面と完全に同一にした方がいいと思う。むしろ、ワイヤーフレーム付きの図面(本来的な線図とは異なる図面であるとしても)が提出されるか否かで権利範囲は変わらないということが本件審決から導き出せるため、リスクを冒す必要はない。

 

図面作成者によると、CG図面に基づいて、本来的な図面(ワイヤーフレームのないもの)を作成するにはかなり時間がかかる一方で、CG図面を線図に変換させるのはボタン一つで一瞬で可能なようだ。それなのに、審査段階では、CG図面の方を「細部にまで形状を正確に特定できる」と認定しており、皮肉なものである。本件審決によって、今後、図面屋さんの仕事を激減させてしまう可能性もあるであろう。

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