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2018.07.31

Vol.2(おもてなし)

無効2014-890062

関連条文:商4条1項11号

 

1.概要

一見識別力の弱そうな言葉が共通し、図形の有無が異なる商標が類似と判断された。「おもてなし」の識別力が弱いという被請求人の主張は認められなかった。理由として挙げられたのは、「おもてなし」が、サービス業等で使用されているとしても、本件商品の品質表示として普通に使用されている事実がないというものであった。また、図形部分が本件商標の商標権者の商標として周知である旨の主張についても、図形部分は、ほぼ「ITOEN」の文字なしで使用されておらず、単独で周知とはいえないとして認められなかった。

 

2.コメント

識別力の弱そうな言葉の古い登録例がある場合、識別力ある図形等を組み合わせて登録し、現時点でのその言葉の識別力の欠如又は弱さを確認することは有効な方法である。本件は、せっかく確認したのに無効にされて気の毒な事例である。この事例から、審査官の判断のみでは安心できず、識別力判断は慎重に行う必要があるといえる。

ちなみに、上記審決日と同時期に、第33類「日本酒」や第29類「乳製品」等について、商標「おもてなし」、「OMOTENASHI」、「O・MO・TE・NA・SHI・JAPAN」が、宣伝文句として用いられる等として識別力を有しない旨が判断されている(不服2014-21668、不服2014-21667、不服2015-1139)。この時期には、東京へのオリンピック誘致のため、滝川クリステルが「O・MO・TE・NA・SHI」のリズムで日本の良さをアピールしたことにより、各種事業者がこぞって宣伝文句として使い始めたことが識別力低下の原因と考えられる。

これらの事例と本件とを比較して、商品分野において、宣伝文句としての使用状況に大きな違いがあるようには思えないだけに、本件は厳しい判断であると思う。

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