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2021.10.23

Zoomが商標権侵害!?商標”Zoom”は誰の手に?問題~決め手は●●~

ビデオ会議システムZOOMが商標権侵害で訴えられた事件の解説を解説します。訴えたのは音響機器メーカーZOOM社ですが、最初に登録を持っていたのはあの”トンボ鉛筆”で、さらなる外国企業もZOOMの商標登録を持っている…ZOOMの四つ巴戦争となっています。商標のカオスな世界をご賞味あれ。

 

はじめまして!brandesign専属ライターのタイガー小林です。これから商標に関するお役立ち情報を色々と発信していきますので、どうぞ宜しくお願い致します。

 

1.背景と争点

コロナ禍で一躍有名になったビデオ会議サービスの が、今度は提訴されたことで話題になっている。原告は株式会社ズーム。エフェクターやレコーダーなどの音楽用電子機器メーカーで、その ブランドは業界で既に固たる地位を築いている。原告側の発表によると、 の台頭に伴って自社の受付窓口にビデオ会議サービスに関する問い合わせが殺到、更に の米国本社が決算を発表した際には、社名を誤認した株取引によって自社の株価が2日連続でストップ高を記録、その後に急落するという被害に見舞われた。原告側は和解金等での解決を排除し、あくまで商標権の侵害を主張して徹底抗戦する構えだ。

 

原告は『』のロゴで商標権を保有している。商標権というものは、必ず商標(ネーミングやロゴ等)と商品や役務(サービス)とのセットで登録されている。商標が同じだった場合、そこに紐付く商品や役務も同一であれば登録不可だが、異なっていれば登録が許可される。自動車の『AQUA』と洗濯機の『AQUA』などが良い例だ。現在、登録されている の商品や役務を見てみると、

『…電子計算機(=パソコン)用プログラム(=ソフトウエア・システム)、電子応用機械器具、電気通信機械器具…etc.』となっている(括弧書きや…etc.は筆者が追記)。

 

というビデオ会議サービスは、上記の『電子計算機用プログラム』に該当し の商標権を侵害する可能性がある。

 

では、 には全く勝ち目はないのか?以下の動画で、岡村弁理士がいくつか勝利への道筋を提案しているが、この記事でもその概要を紹介する。

2.不使用取消審判

不使用取消審判とは、登録された商標が3年間使用されていない状況が続くと、その商標権の取消しを特許庁に申し立てができる制度である。原告が実際のところ という商標をエフェクターやレコーダーにしか使用していないのであれば、それ以外の商品についての商標登録を取消すことができる。そこがクリアになった上で、各社の商品・役務に割り当てられた類似群コード(Q&A類似群って何ですか?を参照)を比較すると、 は11B01、 は11C01となり、特許庁の判断としては類似ではないことになる。

 

 

3.他社との連携

ここで、第三者が登場する。特許庁の検索ツールで”ZOOM”という商標を検索してみると、 よりはるかに先に株式会社トンボ鉛筆が  を商標登録していることが分かる。しかも、 と同じ商品においてだ。それなのに、なぜ登録が許可されたのか。それは、 というロゴが、“ズーム”と読めないため、違うものとして扱われた結果ではないだろうか。こういった読める/読めないの判断は、各審査官の主観に左右されるようだ。

 

と類似と見なされたため、登録を拒絶された。一方、 と似てないから登録となり得たのに、今回の訴訟で原告は が似ていると主張している。それは同時に自らの権利が有効でないと主張することにならないだろうか。

 

また、トンボ鉛筆は、 の商標権に対し、現在2者から不使用取消審判を請求されている。トンボ鉛筆がZOOMを使用していないなら、 がトンボ鉛筆に接近して交渉する余地もありそうだ。もし、交渉が成立し が『電子計算機用プログラム』における権利だけでも譲り受けることができれば、一気に形勢を逆転することができる。

 

4.タイガーの感想

第三者、しかも大先輩の登場で、立場が危うくなりつつある 。改めて、ネーミングの際の事前調査の大切さを痛感させられる。何の調査も行わず、とりあえず出願したら登録になった、これで大丈夫!では、どうやらことは済まされないようだ。”ZOOM”といった、現に存在する英語、しかも一単語で商標権を取得するような場合は特に、海外も視野に入れて入念に調査・検討する必要があるだろう。

 

、この争いの舞台から”zoom out “することになるのは、果たしてどちらだろう…。

 

※この記事は、知財系ライトニングトーク #14 拡張オンライン版 2021 秋 の発表記事です。            

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