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2022.07.01

知財業界での大ピンチ~駆け出しの逆転弁理士~

独学の弁理士講座弁理士の日記念ブログ企画2022に掲載される記事です。

 

2022年6/30から7/1にかけての夜中にこのブログを書いていました。AI vs 弁理士のイベントでAIに敗北したことをピンチのネタに設定していました。ところが、半分寝ながら書いていたせいか、あろうことか朝起きると完成間近の記事が保存されていませんでした。もう一度同じネタを書く気力はないため、別のピンチネタを簡単に書きます。

 

私が就職したのは2009年。小規模の特許事務所に新卒で入りました。そこは、なかなか厳しい教育方針で、入所して1ヶ月後に新規顧客(以下A社)の商標担当として電話対応をすることになりました。当時の私は商標法の知識はあったものの実務未経験だったし、何より社会人としてぺーぺーだったので電話でどう話して良いかも分かりませんでした。

 

めちゃくちゃに緊張しながら、先輩の真似をして電話をしました。その件は、A社の登録したい商標と明らかに類似の先行商標があり、先行商標は使用されていたので不使用取消審判も難しい状況でした。その旨をお客さん(A社の担当者)に説明しましたが、全然伝わりません。A社は商標登録の知識がない会社だったので、うまく説明しないと伝わらないのは当然です。最終的にはお客さんは怒ってしまいました。怒られた理由は私の説明の拙さもありますが、何より”聞かれたことに応えなかったから”だと理解しています。

 

お客さんは「その商品で登録できないなら、別の商品でならどうか?」と聞いてきました。例を出すと、実際に販売している商品は「除菌効果を有するシーツ」だが、登録できないなら「除菌剤」を指定して登録できるか?というような質問でした。これに対して、私は「”別の商品(例でいうと除菌剤)”で登録しても意味がないので止めた方が良い。」旨を丁寧に伝えました。これは、法律的には正しいのですが、聞かれていることには答えていません。今考えると苛立つ気持ちも理解できます。調査や登録に意味がないとしても、まずは質問に応える必要があったのです。

 

仮に違う応え方をするとしても、「”別の商品”で登録できるかどうかについては即答できないため時間をかけて調べたい。ただ、調べた結果登録できそうだったとして、登録しても法的に意味がない。結局その商品名を使えなくなるリスクは残る。この状況を踏まえて調べる?」という順序で伝える必要があったのだと思います。

 

結局A社は”別の商品”を指定して出願しました。私の上司から法的に意味のない権利であることを説明し直し、お客さんに理解していただいた上でです。この経験から、法的に意味のあることをするのは常に正解ではないこと、そして何より、聞かれたことに応えなければならないことを学びました。

 

その後実務経験13年を積んで、商標登録する理由には法的にどうかという以外に様々だということを実感しています。

 

実はこの商標登録の後どうなったかには後日談があります。その話はまたどこかで話したいと思います。

 

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