INFORMATION情報発信

2024.05.01

【偽ヤクルト現る?】防護標章登録で飲料以外に権利範囲を拡張せよ

ヤクルト容器の模倣品ではないかとリクエストがあった件を解説します。商標権の範囲は商品・役務(サービス)のジャンルが異なれば問題ないという原則がありますが、著名なブランドは防護標章登録によって商品役務の範囲を拡張できることや、防護標章登録の範囲を越えるて規制可能な不正競争防止法についても触れます。最後に商標権と意匠権の範囲の違いについても説明します。

 

1.番組概要

複雑に入り組んだ商標業界に緩やかなメスを入れ、様々な謎や疑問を優しく究明する「ゆるカワ商標ラジオ」毎週木曜日22時〜配信📢

2024年4月25日

▼各種Podcast音声配信はこちら

Apple Podcast Spotify amazon music

 

2.ヤクルト容器の模倣品問題〜商標権の範囲の肝は”商品役務”にあり〜

12:41  当番組ヘビーリスナーの方から「あのヤクルトの容器にソックリな形の容器がドン・キホーテで売られています。これってアリですか?」とのリクエストを受け、解説しています。

 

ヤクルト容器比較図

(※容器の縮尺を揃えて表した比較図)

 

▶︎権利侵害は原則として乳酸菌飲料のみ

商標権侵害か否かの判断において重要だけど見落とされがちなのが”指定商品役務”です。例えば、同じ「スーパーカップ」でもアイスクリームは明治、カップ麺はエースコックとメーカーが違いますよね。このように、商品・サービスのジャンルが異なれば同じ商標(名称やデザイン)を第三者が使用しても不問という原則です(商品役務の詳細は適切な商品役務の記載に関するQ&Aで解説しています)。この原則は立体商標でも同様に当てはまります。そうすると、ヤクルト容器の立体商標登録における指定商品は「乳酸菌飲料」である以上、単なる「容器」には商標権の効力が及ばないことになります。

 

▶︎防護標章登録で飲料以外に権利範囲を拡張せよ

上記原則の例外として、著名なブランド名やデザインについては、商品の範囲を広げることができる防護標章登録制度があります。これによって、元の商標権の範囲「乳酸菌飲料」を越えて守ることができます。そのために、防護標章登録の出願では(通常の商標登録出願と同様に)区分に沿って具体的な商品役務を指定していきます。今回問題提起されたドン・キホーテの容器は、本件の防護標章登録における指定商品「プラスチック製包装用容器」や「水筒」等に該当するようにも見えます。しかし、商標法の解釈上、最も該当しそうなのは「食器類」に含まれる「コップ」であると考えられます。この解釈を導き出すには、商標法の趣旨や有名判例をベースにして、「商品及び役務の区分解説」や審決例・裁判例を参照する必要があります。

 

▶︎さらに拡張!不正競争防止法

防護標章登録で規制可能なのは、同一の標章(名称やデザイン)のみです。一方、不正競争防止法では類似範囲まで規制可能です。その例としてISSEY MIYAKEの有名バッグ「BAOBAO」に関する事件に触れます。不正競争防止法では権利がなくても有名なデザインであれば他社による模倣を規制できます。この事例では、原告商品(BAOBAOのバッグのデザイン)が有名であることに加え、被告の商品がこれに類似すると認められ、差止と損害賠償が認められた事例です。

baobaoデザイン比較画像

 

3.商標と意匠で異なる”包装容器”の範囲

35:32  ヤクルトの登録商標と登録意匠で指定された「包装用容器」。同じ「包装用容器」といえども、商標権の効力が及ぶ範囲と意匠権の効力が及ぶ範囲は異なります。この点は各制度の趣旨の違いによるもので、商標法は出所の混同防止、意匠法は創作の保護が制度の趣旨です。このような違いをベースに、実際の審判や裁判の例でも異なる扱いをされています。

 

[参考情報]

▼ヤクルト容器事件(知財高裁平成22年11月16日、平成22(行ケ)10169) https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=80840

 

▼ヤクルト立体商標登録(登録第5384525号)

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2008-072349/40/ja

 

▼ヤクルト立体商標防護標章登録(登録第5384525号防護第01号)

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2018-087752/40/ja

 

▼ヤクルト意匠登録(登録第409380号の類似6)

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/DE/JP-0409380-006/35/ja

 

▼BAOBAO(バオバオ)事件(知財高裁令和元年6月18日、平成29(ワ)31572)

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=88794

CONTACTお問い合わせ

<お気軽にお問い合わせください>

03-6773-9040

<お問合せ対応時間>10:00~17:00 定休日/土日祝日
※事前にご連絡いただければ、上記時間外も対応可能です。