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2019.05.07

Vol.20 (吸引器)

平成30年(ワ)第13381号東京地方裁判所 不正競争行為差止請求事件

 詳細

1.結論

類似する形態の商品の製造販売が出所の混同を生じさせる行為には該当しないとして、差止請求は棄却された(不競法2条1項1号)。

 

 

2.概要

被告商品は、周知な商品形態に類似するとされながらも、取引の実情を考慮し出所の混同のおそれはないと判断された。具体的には、以下の取引形態等からすると、需要者(医療従事者)は、両商品の出所が同一とは誤認せず、かつ、原告と被告との競合関係を十分に認識している状況といえ、原告と被告との間に系列関係等があるとも誤認しないと判断された。

 

・原告及び被告の商品は、医療従事者が、医療機器の製造販売業者から、当該医療機器の特色、機能、使用方法等に関する説明を受けて、購入を決め発注するというプロセスをたどって取引される

 

・多くの医療機関では、同種の医療機器については一種類のみを採用しているところ、原告及び被告の商品には、商品自体に商品名及び会社名が記載され、それぞれ別々のパンフレットが作成され別々に販売される

 

・需要者は専門知識を有する医療従事者である

 

・本件商品市場において、原告のシェアは約30~40%であり、被告のシェアは約5ないし15%である

                                                                                                          

 

3.コメント

本件事例で原告商品形態は周知性を獲得しているという裁判所の判断が示されているため、原告が立体商標の出願を行えば周知性が認められ、商標登録できそうである。商標登録を受けた場合、商標法上は、「商品の出所混同のおそれ」は侵害の要件ではないため、本件とは異なり商標権侵害が認められる可能性がある。

 

一方、判例上商標の類否判断の基準は「商品の出所混同のおそれ」の有無であるため、本判決のように混同のおそれがないなら商標(商品形態)も非類似となるとも解釈できてしまう。不競法では「類似」と「混同」が別要件であるため、このような問題が起きないが、商標法では類似と混同が切り離せない概念のため、ややこしい話になっている。

 

この問題は突き詰めると取引の実情をどこまで考慮するかという話になってくる。原告商品と被告商品との外観の類似度の高さから考えると、称呼の違い及び出所の混同が起きないという取引の実情によって非類似とはならないように思われる。特に、法律は異なるものの、趣旨が共通する不競法で類似と裁判所が判断してしまった以上、その後商標法の侵害訴訟で非類似とはいい難いものと推測される。原告には是非ともチャレンジしてみてほしいものである。

 

ちなみに、平成25年(ワ)第31446号では、厳密には「バーキン」のバッグと出所混同が起きていないと思われる商品「ジンジャーバッグ」の販売が立体商標の商標権侵害と判断されている。この事例では、著名なラグジュアリーブランドの商品であったり、被告が充分に反論していないなどの特殊な事情もあるが、参考になる。

 

なお、本件では、原告商品の販売から30年以上経過しているので意匠権があったとしても模倣排除は不可であるが、「時期的な問題がなければ、意匠権なら混同は要件じゃないから容易に侵害と認められるなぁ。」と、しみじみ感じた。

 

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