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2018.12.16

Vol.13 (音楽マンション)

平成28年(行ケ)10191

平成28年(行ケ)10191 音楽マンション 第36類 建物の管理,建物の貸与等

 

1.結論

本件商標は識別力ありとして登録が無効にならなかった(知財高裁にて、特許庁無効審判の審決が維持された

 

2.概要

原告が出願した本件商標と同一商標(同一役務)について2003年に識別力無しとして拒絶査定となったにもかかわらず、本件商標(2014年に登録)は識別力有りとされた。原告は、本件商標は役務の特徴等を表す語として一般的に使用されている旨及び前回の識別力が否定されたため特許庁の本件商標に関する判断は禁反言や信義則上、違憲、違法である旨主張した。特許庁審判官及び知財高裁はこのような原告の主張を認めなかった。その理由として、裁判官は、原告の主張する使用例のほとんどが原告の建設したマンションに関するものであるため一般的とはいえないことに加え、不服審判請求をするなどして正しい判断を求めなかったため原告の主張は失当であると指摘した。

 

3.コメント

原告にとって酷な事案である。原告が不服審判をすべきだったという裁判官の指摘は商標法に従ってはいるが、現実的ではないと感じる。不服審判をするには通常費用も時間も多くかかるためである。識別力欠如の拒絶理由に対して意見書による反論が認められなかった場合、その商標を自由に使用していいと考える出願人は多いと推測される。

 

本件に基づくと、識別力欠如による拒絶査定には不服審判請求すべきである。もしくは、拒絶された商標(以下「X」という)及び他の識別力の有る商標を組み合わせた結合商標(X+○○)の出願をすべきである。このような結合商標は、第三者による後願商標の審査にて引用され得る。例えば、以下の事例では、識別力の無い又は弱い商標について他の商標と組み合わせた結合商標を登録しておくことによって、後願商標を排除している。 ※なお、ありふれた苗字+「屋」のアルファベット表記「○○YA」は、識別力欠如の可能性がある(例:「おかだや/OKADAYA」不服2009-175)。 ※なお、「○○の恵み」は、識別力欠如の可能性がある(例:「太陽の恵」商願2009-035249)。

 

このように、第三者に出願される商標「X」の登録を防止しつつ、商標「X」を長期間使用した後、登録に挑戦するという方法も考えられる。

 

余談だが、この判決についてある弁理士と議論した際、現在原告は「MUSISION」という商標を使用しており、この商標の方が良いネーミングじゃないかという意見を聞いた。確かに、そうかもしれない。裁判所は「音楽マンション」の識別力を肯定したが、現実世界で識別標識として理解されない可能性があるし普通名称化しやすそうな名称でもあることを考えると、「MUSISION」の方が造語度合いが高く、しかもそこそこ覚えやすい。

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