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2023.12.01

【バンド名は商標⁉】Mrs.Green Appleの商標登録に異議申立

さて、2023年も12月に入り年末ですね。今年はジャニーズ、宝塚、kiinaなど様々なニュースがあった芸能界ですが、その影響をモロに受けたのが年末の風物詩”紅白歌合戦”-白組は初出場組が増えました。その初出場組の一画を担うのが今年大活躍のMrs. GREEN APPLE(ミセスグリーンアップル、略してミセス)です。そのバンド名にまつわる商標の話をラジオ風番組で解説しました。その番組内容+αをまとめたのが本記事です。

 

1.番組概要

複雑に入り組んだ商標業界に緩やかなメスを入れ、様々な謎や疑問を優しく究明する「ゆるカワ商標ラジオ」毎週木曜日22時〜配信📢

2023年11月30日

[特別ゲスト]グリーンアップル夫人(弁理士兼ミセスファン兼オカムラ夫人)

 

2.商標解説

00:00 異議申立人は世界の”アップル社” 

「Mrs.GREEN APPLE」 vs 「APPLE」の闘いです。ミセスグリーンアップルの所属事務所(当時)が取得した商標登録に対して米アップル社が異議申立しました。結論からいうと特許庁は米アップル社の主張を全面的に認めませんでした。

 

まず識別力(3条1項3号)の議論です。「Apple」と似てる云々の話でなく、そもそも識別標識としての商標なのか?というテーマです。商標審査基準上、著名なバンド名・アーティスト名は商品「レコード」等について識別力がないとされています(「レコード」は音楽CDを含むとご理解ください)。本件で、特許庁の審判官は「Mrs.GREEN APPLE」のバンド名が著名でないと認定しています。一方、特許庁の審査段階(登録前)では音楽グループ名と認識されると認定され、出願人がレコードや音楽データの商品を削除補正することにより登録していた経緯があります。つまり、審査と異議とでは、対象の商品役務が異なるものの同じ音楽に関する商品・役務について、審査と異議とで異なる結果となりました。異議申立ではアップル社が著名である証拠を提出していないことが影響していますが、特許庁にも多少は調べて欲しい気はします(職権主義だもの)。

 

次に出所の混同(4条1項15号)の議論です。平たく言うと商標が類似する?両者の事業が関連すると誤解させるか?というテーマです。特許庁の審判官はコンピュータ関連の商品で米アップル社の「APPLE」は周知だと認定しました。ここで、商標審査基準では、周知商標を含む商標は周知商標と類似と判断することが原則であるとされています(例:「ラブロレアル」と「ロレアル」)。しかし、本件で特許庁は「Mrs.GREEN APPLE」と「APPLE」を非類似と判断しました。両商標は観念(意味)において「グリーンアップル夫人」か「りんご」かで異なると…。まぁこれが正しいかはどうあれ、「Mrs.GREEN APPLE」がアップル社公式のバンドとは誤解しないですよね。

 

19:17 世界のビートルズも関与⁉蘇る”りんごマーク”紛争

引き続き出所の混同(4条1項15号)の闘いです。アップル社はAPPLE及びApple Musicの他、アップルコア社の青りんごマーク🍏にも基づいて異議申立をしました。そもそも、このアップルコア(Apple Corps Ltd.)という会社はザ・ビートルズが設立した音楽レーベル会社のようです。米アップル社は英アップルコア社と訴訟を繰り返し和解していた歴史がありました。和解により米アップル社がAppleやりんごマークについて商標権を保有し英アップルコア社(ビートルズ側)の使用を許諾している関係性にあります。そしてアップルコア社が使用する青りんごマークと「Mrs.Green Apple」が観念(意味)において紛らわしいというのが本件の米アップル社の主張です。これも認められませんでした。

 

さらには、公序良俗違反(4条1項7号)の主張もされましたが、認められませんでした。ミセスファンのグリーンアップル夫人も一安心ですね。

 

37:41 クリスタルキングは商標的使用?

Mrs.GreenAppleの商標権はミセスの前所属事務所の名義となっております。では仮に前事務所が現事務所を訴えた場合、現事務所及びミセスグリーンアップルのメンバー達はMrs.GreenAppleを使えなくなるのか!?その答えの参考になるのは、クリスタルキング事件です。大都会でお馴染み”クリスタルキング”の元メンバーが訴えられた事件です。コンサートの広告において「田中雅之(クリスタルキング)」のように音楽グループ名を表示した行為の使用の可否が争われました。

 

この事件で裁判所は「音楽の演奏(第41類)」について商標的使用でない(いいかえれば使用態様を考慮すると識別力なし)と判断しました。商標審査基準では「レコード」等の第9類のみが識別力なしとされており第41類については登録される運用となっているだけに興味深い判決例です。

 

では、ミセスグリーンアップルも自由にコンサートができるということなのか…!?グッズは…!?前事務所の権利なら不使用取消審判もあり得る?加護亜依事件!?愛内里菜事件!!?等々、マジカルバナナ(連想ゲーム)が止まりません。

 

ちなみに、これらの歌手名やアーティスト名、芸名については、2024年4月1日施行の商標法改正(4条1項8号)にも関連してくるので知財業界的にもホットな話題ですね。これらのテーマについて、当ウェブサイトでは繰り返し解説してきました。LADY GAGA事件やELLE GARDEN事件についてはアーティスト名に関する商標の記事で解説しており、氷川きよし(kiina)や友近の西尾一男などの商標問題については歌手名・芸名に関する商標の記事にて解説しております。ご興味ある方は要チェックやで!

 

3.おまけ

41:24 偶然は必然!?天才はリンゴに行きつく説?

The BEATLESとMrs.Green Apple、共に世界的人気のロックバンドが選んだモチーフが偶然にも青りんご🍏だという奇跡。そこにエモさを感じるオカムラとピンとこないグリーンアップル夫人。そもそもアップル社のジョブズもリンゴを選び、ニュートンも、アダムとイヴも…これは何か繋がっているに違いない!

 

知財系 Advent Calendar 2023(#IP_AC)の投稿でした。

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